ワキガの診断方法~耳垢が湿っていなければ、ワキガじゃない?~

最近、男性も臭いについてケアをする人が増えてきているようです。もしかしたら、自分はワキガじゃないか?と敏感になって皮膚科を受診される方がおられますが、思い過ごしの人もかなりおられます。

ワキガとは?

ワキガとは、ワキにあるアポクリン汗腺という汗を出す細胞が通常の人よりも発達してしまっているために、ワキの臭いが強くなってしまった状態のことを指します。医学的には腋臭症(えきしょうしゅう)と呼ばれ、アジア人よりも欧米の方が多いと言われています。
もう少し詳細に説明すると、汗腺には2種類あります。アポクリン汗腺とエクリン汗腺です。アポクリン汗腺からの汗には、タンパク質や脂質などの有機成分が含まれているため、独特の刺激臭がします。また、皮膚上にいる細菌がこれらの有機成分を分解することでさらに強いにおいが発生します。一方で、エクリン汗腺からの汗はほとんどが水分なのであまり臭いません。

耳垢(みみあか)との関係

 アポクリン汗腺は耳の穴にもあるのです。それ以外にも脇、ヘソ、乳首、陰部などにも多く存在します。ワキガの人は外耳道のアポクリン汗腺が発達しているので耳垢が湿っています。このため耳垢が湿っている人がワキガだという認識が持たれています。しかし、耳垢が湿っているからといってワキガでない人もいます。一方で、耳垢が湿っていない人はワキガではないと判断できます。

ワキガの診断方法

 皮膚科でのワキガの診断では実際に臭いをかぎ判断します。似たような症状に多汗症があります。汗の量が多い臭いがきつくなりやすいのですが、多汗症だからといって必ずしもワキガとは限りません。

ワキガの治療

ワキガの対策はいくつかあります。対処療法的なものと、根本的な治療に分かれます。

  • 対処療法(市販のもの)

    • 汗を吸う

      • 制汗剤スプレーなど
    • 別のにおいでごまかす

      • 香水
    • 汗を抑える

      • 焼ミョウバンのクリーム(高濃度のものはクリニックでのみ入手可能)
  • 対処療法(皮膚科でしか手に入らない)

    • 汗を抑える

      • 塩化アルミニウムローション・クリームなど
      • プロバンサイン内服薬
      • ボトックスの注射
      • イオントフォレーシス
  • 根治を目指す

    • レーザー治療
    • 手術

対策の効果大まかには以下のようになります。
手術 > レーザー治療 ≧ ボトックスの注射 > イオントフォレーシス > 塩化アルミニウム ≧ 焼ミョウバン

皮膚科で行うワキガ対策

皮膚科で行うワキガ対策はより強い効果が期待できます。それぞれの治療方法を見ていきましょう。

塩化アルミニウム

  • メカニズム
    塩化アルミニウムの作用機所はよくわかっていません。汗の菅のどこかを閉塞させて、汗が皮膚の上に出てこないようになると推測されていたり、汗を作る細胞に直接作用して汗の量を減らしていると推測されていたりします。
  • 治療方法
    塩化アルミニウムを塗るだけです。寝る前に塗って朝に洗い流す方法や、一日に何回も塗る方法があります。
  • 保険適用
    適用対象外
  • 副作用
    刺激性があるため肌の弱い人は赤くなったり、かゆくなったりします。

プロバンサイン内服薬

  • メカニズム
    発汗は、アセチルコリンという物質が汗の腺に作用して起こります。そのアセチルコリンの作用を抑えるためのお薬です。
  • 治療方法
    1日に3~4回服用する、もしくは汗を抑えたいときだけ服用します。ただし、緑内障・前立腺肥大症・心臓病があると処方できません。
  • 保険適用
    対象
  • 副作用
    人によってはむかつきが出たり、のどが渇いたりします。

ボトックスの注射

  • メカニズム
    汗を作る細胞の周りに薄い筋肉がへばりついていて、その筋肉が収縮することで発汗します。ボトックスはその筋肉を収縮しないようにする作用があります。
  • 治療方法
    ボトックス注射をしたところから1.5cm程度の範囲に効果が出ますので、効果を出したいエリア全体に満遍なく注射します。ボトックスの種類にもよりますが、長持ちするもので6-9ヶ月程度効果が持続します。
  • 保険適用
    ワキのボトックス注射は対象
  • 副作用
    注射時の痛みがあります。(注射回数も多く、片ワキで20箇所程度です)
    深いところにある筋肉に影響すると一時的に腕が上がりにくくなることがあります。

イオントフォレーシス

  • メカニズム
    水素イオンが汗の穴に作用して発汗を抑えると考えられています。
  • 治療方法
    水道水の入ったトレイの中に電極の上にスポンジが乗っており、そのスポンジに手足を乗せたままで30分程度電気を流します。ピリピリとした刺激を感じます。
  • 保険適用
    対象(3割負担の方で660円)
  • 副作用
    人によっては刺激感が強いため治療が出来ないことがあります。また、手足に傷があると痛くて出来ません。
    電気を流すので金属が体内にある人、ペースメーカーを装着している人、妊娠中の人では出来ません。

レーザー治療

  • メカニズム
    マイクロ波(電子レンジで使うものと同じ)で汗の腺がある層の深さに熱を加えて破壊し、汗が出ないようにします。
  • 治療方法
    麻酔注射をしたうえでワキ全体にレーザーを当てます。効果は永続的だという医師もいますが、ある程度再発することもあります。やせすぎている方の場合は、わきの下の重要な神経にレーザーが作用する可能性があるので施術できないことがあります。
    1回の施術で30万円前後の費用がかかります。
  • 保険適用
    適用対象外
  • 副作用
    施術後に引き連れ感やボコボコした感じがしばらく続くことが多いです。

手術

  • メカニズム
    アポクリン腺を取り除き臭いが出ないようにします。
  • 治療方法
    ワキの皮膚の一部を切って、そこからワキの皮膚の裏のアポクリン腺の存在する層を切除します。臭いに関しては、効果はかなりありますが、エクリン汗腺が残るので汗に関しては変わりません。
  • 保険適用
    対象
  • 副作用
    術後に4,5日程度ガーゼ固定が必要であることと、施術後に引き連れ感やボコボコした感じがしばらく続きます。

まとめ

 ワキガ対策には様々なものがあり、人それぞれにあった治療を行うことが望ましいです。ただ残念ながら皮膚科でワキガの治療に対応しているところはあまり多くありません。治療に必要な機器が導入されていなかったり、ボトックス注射を取り扱ったことがなかったり、と様々な理由で対応が進んでおりません。このため治療方法などで相談したいことがある場合は、事前にお近くの皮膚専門医またはLoquatでご相談ください。

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