ステロイドを塗ると黒くなる?そう思っているのは日本人だけらしい

「ステロイド軟膏を塗ると色が黒くなる」という、患者さんからの不安はよく聞かれます。薬剤師や看護師でも信じている人も未だに少なくないです。しかし実際には、ステロイド軟膏のせいで肌が黒くなっているわけではありません。

どうして黒くなるのか?

黒くなるのはメラニンという色素が生成されて皮膚に蓄積されるためです。皮膚が炎症を起こすと、メラノサイト(メラニンを作る細胞)が刺激されてメラニンが出てきます。炎症が生じてから2週間程度でメラニンが出てきます。最初は炎症が起こっているので赤みが出ています。その後、炎症が治まっていくにつれて黒さが目立っていきます。炎症が強いときは、赤みが濃く黒さが見えにくくなることもあります。けがや虫刺されの後に黒くなるのはこのメカニズムのためです。日焼けで皮膚が黒くなるのも同じで、紫外線の刺激でメラノサイトが刺激を受けてメラニンを出すからです。擦るなどの外的な刺激でも同様にメラニンが出てきて黒くなります。

ステロイド軟膏のせいで黒くなると勘違いする理由

炎症(湿疹)の起こっているところにステロイドを塗ります。その箇所の炎症が治ってくると、徐々に黒く(シミ・色素沈着とも言います)なってきます。このため、黒くなるところにステロイドを塗っていたので、ステロイドのせいで黒くなったように感じてしまうことがあります。これがステロイド軟こうのせいで黒くなると勘違いする理由だと考えられています。しかし、実際にはステロイドのせいで黒くなったわけではなく、炎症によりメラニンが出てきたから黒くなっています。炎症の期間が長ければ長いほど黒さが濃くなり、消えるまでの期間も長くなります。このため、早く炎症を鎮めるためにステロイドの塗り薬を塗った方がよいです。処方されたお薬で何か不安があれば、診察後でも遠慮なく医師や薬剤師に相談しましょう。興味深いことに、ステロイド軟膏を塗ると黒くなると思っているのは、世界中で日本人だけだという研究発表があります。日本人の性格や文化などによって発生した精神疾患であり、「文化結合症候群」と言うそうです。

黒くなったのを治すには

基本的には、時間とともに徐々に黒さが薄くなっていきます。この際に、黒くなったところが再び皮膚での炎症を起らないようにすることが大事です。皮膚で炎症が起こっているか見分ける方法は、皮膚表面のザラツキがあるかどうかです。皮膚でのザラツキがあればすぐにステロイドを塗ってツルツルした状態を維持しておきましょう。また、何かしらの理由で皮膚が炎症を起こしてしまうようであれば、その原因に対しての予防が必要です。乾燥であれば、石鹸で洗いすぎないとか保湿をしっかりするなどです。仕事などで何かしら肌に合わないものが付着してかぶれて皮膚での炎症が起るのであれば、接触しないように手袋などを使用するなどです。つるつるした状態が続いていれば、顔であれば半年から1年程度、体や腕や足では数年程度で色素沈着は消えていきます。極稀に、ある程度以上の量のメラニンが真皮に落ちてしまい代謝されなくなってしまう場合があります。その場合はレーザー治療をすることがあります。ツルツルした状態を数年維持しても黒さが消えなかった場合には、皮膚科専門医に相談することをお勧めします。

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