美容師・看護師・調理師など仕事での手荒れが悩みの方へ薦める解決策

美容師・看護師・調理師など仕事での手荒れが悩みの方へ薦める解決策

仕事での手荒れ

美容師・看護師・調理師など水を扱う職業では、手荒れに悩まされる人が少なくありません。水を扱わないようにすれば、症状は改善しやすいのですが、仕事柄そのようなわけにはいきません。仕事を変えるのもそれほど簡単ではないので、今の仕事を続けながらできる対策を見ていきたいと思います。

そもそも手荒れとは?

進行性指掌角皮症(しんこうせいししょうかくひしょう)というのが正式な病名です。美容師・看護師・調理師の他に、主婦・事務職員・銀行員・作業員など水や手をよく使う人たちに多くみられます。手荒れは主に利き手の親指、人差し指、中指の指先から発症することが多いです。初期症状は、指先の軽い角化(かくか 皮膚が硬くなること)、乾燥、指紋の消失などです。次に、薬指や小指や手のひらなどに症状が広がり、強い乾燥、強い角化また皮膚が乾燥してはがれ落ちる落屑(らくせつ)が発生します。さらに進行すると、赤身やかゆみを伴ってきて、小さな水膨れやジクジクした皮膚の状態になり、ひび割れも見られるようになります。このまま適切な治療をせずにいると皮膚がゴワゴワした状態になる苔癬化(たいせんか)を起こし、治療してもなかなか治りにくくなります。

手荒れの原因

手荒れの原因は、主に3つあります。外的刺激、かぶれ、手荒れになりやすい体質です。

  1. 外的刺激
    水仕事などでお湯や洗剤を使ったり、パソコン・紙・お札などを扱ったりして、手に刺激を与えると皮脂が取れてしまいます。繰り返し刺激を与えると、過剰に皮脂が取れてしまい皮膚の水分が失われます。これが原因で手が荒れてしまいます。
  2. かぶれ
    手は様々なものを扱います。生活の中で常に使用するものや仕事で装着するものなどによってかぶれることがあります。手がかぶれてしまうと手荒れにつながります。普段使用しているものでかぶれるので、なかなか原因が特定できないことも多いです。皮膚症状の分布から原因物質を推測してその物質の使用を中止したり変更してもらったりします。
  3. 手荒れになりやすい体質
    症状の発生には個人差があり、一般に、乾燥肌やアトピーを持つ人は外からの刺激に敏感な皮膚なので、発症しやすいです。また、季節性があり、冬にひどくなり、夏によくなることが多いです。乾燥肌やアトピーを持つ人の皮膚は、一般に皮膚のバリア構造が脆弱になっており、皮膚の中に様々なものが入り込みやすくなっています。これが何らかの物質が皮膚の中に入り込み刺激になったり、体質によってアレルギー反応を起こしてしまったりして手荒れの原因になります。

手荒れの治療

  • ステロイド外用剤(がいようざい、塗り薬のこと)
    手が荒れてしまったら、ステロイドの塗り薬を利用して治療します。皮膚症状にあわせて適切な強さのステロイドを適切な使用方法で使えば安全に良い状態を継続できるようになることが多いです。具体的には、手であれば最も強い(Strongest)ものか2番目の強さ(Very Strong)のステロイドを使用します。これらは処方薬のため、ドラッグストア等では入手できません。手は皮膚が分厚く吸収率が低いので、3番目以下のステロイドでは効果が出にくいと考えられます。ステロイドに関しての説明は「ステロイドについて皮膚科専門医に聞いてみました」を参考にしてください。ステロイドは「炎症を抑える」効果のあるお薬です。ですので、手荒れの原因を解決するわけではありません。手荒れの完治には、日常生活の中で手に刺激を与えていること(水仕事、事務仕事など)をやめ、かぶれの原因(ゴム手袋など)を解消しなければなりません。しかし、完全に原因を解決できないことも多いために、ステロイドを適切に安全に使用することで、副作用を起こすことなく炎症を抑えて皮膚の良い状態を保つことが可能です。ステロイドは赤身や痒みがなくてもザラツキがなくなるまで1日、2~3回使用することが基本的な外用方法です。ただ、なかなか正しく使用するのが難しいため、よくわからないときは皮膚科専門医の指導を受けて使用することをお薦めします。

手荒れの予防方法

  • 保湿剤
    手に対する刺激からの防護として保湿が有効です。手が乾燥していれば一日に何回も保湿剤を塗っていただくことが大切です。保湿を行うことで、手荒れの症状が和らぎステロイドの使用量も減らすことが可能です。水仕事など手を使う仕事を始める前に保湿することをお勧めします。仕事柄、保湿剤を使うことが難しい場合は、仕事が終わった後になるべく早く保湿を行ってください。手荒れの予防には乾燥を防ぐことが重要ですので、なるべく乾燥しないように保湿剤を使用してください。保湿剤の種類は、皮膚科でよく処方されるものとしては、ワセリン、ヒルドイド、ビーソフテンなどがあります。ワセリンは市販されていることは良く知られていますが、ヒルドイドやビーソフテンの主成分であるヘパリン類似物質を主成分とした保湿剤も市販されています。HPローションなど。
  • 撥水タイプの保湿剤
    保湿剤には撥水効果を持つものがあります。撥水効果を持つ保湿剤を利用することで、撥水コーティングができ直接皮膚に水がつかないようなり、手などを洗うたびに水分が奪われるのを防げます。代表的なものは「セキューラDC」という商品があります。病院で使用されていることが多く、医師や看護師の間では有名な商品です。しかし、世間の認知度はあまり高くありません。薬局でも見かけることは少なく、病院の売店で販売されていることが多いです。 セキューラDCはベトつきが少なく、美容師等の水を使う仕事の方々が仕事を始める前に利用できると思われます。効果の継続は環境により左右されるため一概には言えません。このため、状況に応じて一日複数回利用するのをお勧めします。

日常生活で心がけることは?

  1. 刺激を避ける
    手作業をするときは、綿手袋などを着用して、指先への直接刺激を避けるようにしましょう。また、水仕事の際には綿手袋の上からゴム手袋などを着用して、直接水や洗剤に触れないようにしましょう。
  2. 手を使うことを減らす
    手を使いすぎるのはよくありません。手を使う仕事を減らす工夫をし、できるだけ手に負担をかけないようにしましょう。
  3. 洗いすぎない
    何度も手を洗うと症状が悪化してしまいます。水よりもお湯の方が症状を悪化させやすいです。手を洗った後は、保湿剤をこまめに塗りましょう。

まとめ

手荒れが出来る原因は、

  • 外的刺激(水や事務仕事による刺激)で皮脂が過剰に取れてしまい水分が失われる
  • かぶれ
  • 手荒れにやりやすい体質(乾燥肌やアトピー)

があります。手が荒れてしまったらステロイド外用剤による治療が有効です。残念ながら今のところ手荒れを完全に予防できる方法はありません。仕事や生活の中で少しでも手を使うことを減らしたり、撥水効果を持つ保湿剤を利用したり、こまめに保湿剤を塗ったり、といった地道にできることをひとつずつ工夫してやっていくことが大切です。 また手荒れがなかなか治らない場合は、稀に手の水虫あるいはカンジダ症の合併があります。これらの症状は手荒れと区別がつきにくいため、長期間手荒れが治らない場合は、皮膚科専門医に相談しましょう。

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