薬疹(やくしん、薬アレルギー)の症状と発生後に気をつけること

「薬疹(やくしん)」というのはお薬が体に合わなくて全身にブツブツが出来てしまう病気のことです。「薬剤性の皮疹」を略して薬疹と呼んでいます。お薬が合わなくて生じる皮膚以外の症状では、臓器障害(肝臓や腎臓の障害)やアナフィラキシーと言って血圧が下がってしまうなど様々なものがあります。

さて、一つ例を考えてみましょう。

最近、太郎君は風邪を引きました。

  • 解熱剤A(生まれて初めて内服)
  • 風邪薬B(子供の頃から何回か飲んだことがある)

を飲み始めました。すると翌朝、全身に赤いブツブツが!

経過からは薬疹っぽいですね。さて、薬疹だとすると可能性の高い原因薬はどれでしょう?

答えは風邪薬Bです。今まで大丈夫だったのになぜ?と思った人が結構いたのではないでしょうか?ここからは薬疹の発症・症状や気を付けることなどを見ていきましょう。

薬疹の発症

 薬疹が発症するのは、薬剤を摂取することでその薬剤を体が覚えてアレルギー体質になるためです。ある薬剤を体が覚えてアレルギー体質になるための時間が必要です。このアレルギー体質になる変化を感作(かんさ)と言い、通常は薬を使用してから最短でも5~7日程度かかります。このため先ほどの太郎君の例では、初めて内服した薬ではなく何回か飲んだことがある風邪薬で薬疹が発生したわけです。
薬疹を発症しやすい薬としにくい薬があります。例えば、一部の痛み止めや一部の抗生剤などが知られています。また他にはCTなどで使用する造影剤なども薬疹を起こす可能性が他の薬よりも高いです。しかし、大多数のケースでは薬疹は起こらないため、それらの薬が販売中止になることはありません。薬疹が発生するのは非常に稀なケースなのです。

薬疹の症状

 薬疹と言っても症状は様々なものがあります。紅斑型(こうはん)、蕁麻疹型(じんましん)、播種性紅斑丘疹型(はしゅせいこうはんきゅうしん)、扁平苔癬型(へんぺいたいせん)、光線過敏型(こうせんかびん)、乾癬型(かんせん)、スティーブンスジョンソン型、中毒性表皮壊死症(TEN)型(ちゅうどくせいひょうひえししょう)などです。乾癬(かんせん)や光線過敏症など薬疹と区別がつきにくい皮膚病が存在します。このため現れた症状だけでなく、経過を見ることも薬疹を見分けるのに必要です。
薬疹の原因と疑われる薬剤の使用を中止してしまえば、皮膚症状は比較的早く回復してくることがほとんどです。一方で、薬剤の使用中止によるデメリットや全身がただれてしまって命にかかわるようなこともあります。皮膚科専門医は薬疹の皮膚症状と罹患中の病状のバランスや、投薬中の薬から疑わしい薬剤の優先順位をつけて対処します。薬疹が発生したら、疑わしい薬の使用を中止して皮膚科専門医へ受診することをお勧めします。
一度薬疹が発症すると、基本的には同じ薬を使用した場合には必ず薬疹が発生します。また交差反応と言って、化学構造式が似た物質であれば同じ症状を発症する可能性があります。ただ、専門家でない方がどの薬で薬疹が発生しそうか調べるのは難しいです。典型的なものであれば専門家であれば比較的容易にわかります。それ以外の場合では、薬の構造式からおおよその可能性を予測できることが多いです。(ただし構造式を見て判断できる医師はそれほど多くありません)薬疹が発生した際に、どのような薬で交差反応が発生しそうか皮膚科専門医に相談しましょう。使用している薬によりますが可能性のある薬を教えてくれます。

薬疹の治療

 基本的には原因となる薬の使用を中止すれば治っていきます。ただし粘膜がやられるタイプの薬疹(スティーブンスジョンソン型や中毒性表皮壊死症(TEN)型)は死亡するリスクがあるため、ステロイドの注射を使用することがあります。また薬疹の多くはかゆみを伴うことが多く日常生活の妨げになるので、原因となる薬が特定され使用していない状態であれば経過観察でもよいのですが、ステロイドの塗り薬を使用することが多いです。また症状により日常生活に支障がある場合(例えばかゆみが非常に強いなど)には、ステロイドの飲み薬を使用します。

薬疹で気をつけること

 一度薬疹が発生したら原因となる薬を必ず記録しておくようにしてください。もし原因となる薬を先生から聞いていなかった場合は、必ず先生に確認し可能であれば交差反応が起こる可能性がある薬を聞き合わせて記録してください。
今後病院に行く際には、問診票のアレルギーやお薬で副作用やトラブルが無かったかを確認する欄に必ず記載するようにしてください。また、新しい薬を使用する際などには先生に薬疹がある旨を伝えてください。

まとめ

薬疹は誰にでも突然発生する可能性があるアレルギー症状です。とはいえ、大半のケースでは薬疹は発生せず、また薬を利用するメリットの方が大きいです。このため過度に心配しすぎる必要はありません。万が一薬疹が発生してしまった場合には、皮膚科専門医を受診し、原因となる薬と交差反応の可能性がある薬を確認し、今後に備えましょう。

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